2021-01-01から1年間の記事一覧

佐藤忠男「草の根の軍国主義」(2007)

今回は日本人論の議論の一環で佐藤忠男を取り上げたい。 本書の中心的な議論は日本人の心性における「忠臣蔵」の影響力についてである。これは「忠臣蔵-意地の系譜」(1976)という著書でも基本的に同じ議論をしているので、適宜そちらも取り上げながら佐藤…

藤田英典「市民社会と教育」(2000)

以前黒崎勲のレビューで藤田英典の議論に触れたが、今回はその続きである。本書と黒崎「学校選択と学校参加」(1994)を中心に検討していくが、この両書を読んでみていわゆる学校選択制をめぐる「藤田-黒崎論争」の見方も少し変わった所があった点があったた…

萩野富士夫「戦前文部省の治安機能」(2007)

今回は「国体の本義」をめぐる議論の補論として、荻野の著書を取り上げる。本書の主題は戦時期を中心にした文部省の「教学錬成」、「臣民」としての国民育成の機能についての議論を中心としているが、その中で「国体の本義」や「臣民の道」についても触れら…

ピーター・B・ハーイ「帝国の銀幕」(1995)

今回も「近代の超克」の議論に関連したレビューを行う。 本書は戦時中の映画についての分析を行ったものであるが、特にその映画の「大衆性」に注目し、そのことと戦時の統制的なイデオロギーとのズレについての描写を中心的に行っていることが特徴的である。…

文部省教学局「国体の本義・臣民の道」(2018)

今回は近代の超克の議論との関連で、呉PASS出版から発行された著書を手に取った。 前回までこの近代の超克の議論を考察してきたものの、「結局この近代の超克をめぐる当時の議論はどのようなものが優勢だったのか」については、これらを検討した著書から見出…

孫歌「竹内好という問い」(2005)

今回は竹内の著書を直接レビューするか、孫歌のレビューのどちらを行うか迷った所があるが、「近代の超克」及び人物「竹内好」解釈をめぐる議論について相対的な見方を重視するため、孫歌の方をレビューすることにした。 まず、私の竹内に対する評価を示して…

菅原潤「「近代の超克」再考」(2011)

今回は前回の大塚久雄の議論や、日本人論とも関連してくる「近代の超克」をテーマとした著書を検討していく。 近代の超克をテーマとした著書は2000年代以降それなりの数のものがあるようである。背景としては、3.11という事件以降改めて近代に対する問いへの…

大塚久雄の「近代」観に関する試論 その2

大塚のレビューについては続けないつもりでいたものの、せめて著作集の内容くらいは触れておこうと思い、著作集10巻以降の内容も踏まえ、改めて大塚久雄の「近代」観について考察を行ってみる。 前回、深草論文において大塚の議論の転換を70年代に見出せると…

「主体動員論批判」について―中野敏男「大塚久雄と丸山真男」再訪

前回、中野敏男に触れた。中野の著書は私のこの読書記録帳の1冊目のレビューで、当時課題についても提示していたこともあったので、このタイミングで私の回答を行っておきたいと思う。 中野の著書は、「ボランティア動員論」に対する批判を、その背景にある…

大塚久雄の「近代」観に関する試論

今回は大塚久雄の読解から、言説としての「近代」に対する見方について理解を深めていきたい。これまで行っていた進歩的文化人の議論においても谷沢永一(1996)をもってそのルーツであるとされ、中野敏男(1999)をもって市民社会論者の理論的系譜の祖とみなさ…