ま行

文部省教学局「国体の本義・臣民の道」(2018)

今回は近代の超克の議論との関連で、呉PASS出版から発行された著書を手に取った。 前回までこの近代の超克の議論を考察してきたものの、「結局この近代の超克をめぐる当時の議論はどのようなものが優勢だったのか」については、これらを検討した著書から見出…

村上泰亮・公文俊平・佐藤誠三郎「文明としてのイエ社会」(1979)

今回も日本人論として、大平政権にも影響を与えた著書としても知られる本書を取り上げる。 本書のポイントの一つである多系的発展論の歴史的説明がいかに正しいのかという点は私の能力を超えるため触れないが、欧米的な個人主義や近代化論について一定の批判…

牧久「昭和解体」(2017)

「国鉄の分割・民営化は、二五兆円を超える累積債務(これに鉄建公団の債務、年金負担の積立金不足などを加えると三七兆円)を処理し、人員を整理して経営改善を図ることがオモテ向きの目的であったが、そのウラでは、戦後GHQの民主化政策のもとで生まれた労働…

松下圭一の日本人論(補論)

今回は前回の補論も兼ねる形で、松下の「日本人論」を考察してしたい(※1)。思えば、松下の「社会教育の終焉」のレビューにおいて、「日本的」であることの文脈の捉え方に違和感を覚えたことが、その後の私の日本人論の検討にも大きな影響を与えたように思…

松下圭一の市民論再考(2/2)

○松下にとっての「教育」とは何だったのか? さて、2つ目の問いである。この「市民」に対する意味合いについても過去の言説から分析してみたい。ただ、これに答えるためにはまず、松下における「教育する主体」についての議論をしなければならないだろう。 …

松下圭一の市民論再考(1/2)

今回、改めて松下圭一を読むことにした。 前回の「シビル・ミニマムの思想」のレビュー時点では松下の精読について興味深いとしたものの、それ程重要性について感じていなかったため、読むのをやめてしまったのであったが、最近90年代の日本人論、つまり日本…

妻鹿淳子「犯科帳のなかの女たち」(1995)

本書は江戸時代の岡山藩における「犯科帳」を史料にしながら、当時の社会(共同体)がどのようにあったかについて分析を行っているものである。 特にポイントとなるのは、p72-73にあるような記述である。ここでは過去の議論において江戸時代における農村部の…

杉本良夫/ロス・マオア「日本人は「日本的」か」(1982)

今回はすでに予告していた杉本・マオアのレビューである。 本書は「日本人論」の批判の著書である。本書の大きな主張点の一つは、『日本人論は単一な国民性論とみられており、その複数性を考えようとしない』という点である(p69)。ベネディクトの「菊と刀」…

松下圭一「シビル・ミニマムの思想」(1971)

今回は、「社会教育の終焉」をレビューした際に出てきた議論をもう少し踏み込んで考察してみる。これにあたり、松下の議論を本書とこの直後に出ている「都市政策を考える」(1971、以下、松下1971bとする)、岩波講座「現代都市政策5」に収録されている「シビ…

松下圭一「社会教育の終焉」(1986)

本書は、タイトルの通り「社会教育は時代にそぐわず、滅ぶべきである」と宣言する一冊である。しかし、ノートでも述べた通り、固定観念をもって「社会教育」の領域をとらえる中で、「公民館」までもそのような「社会教育」の観念にしか縛られないものと思い…

見田宗介「まなざしの地獄」(2008)

本書は、1973年発表の「まなざしの地獄」、1965年発表の「新しい望郷の歌」が収録されている。おそらく、メインは「まなざしの地獄」であり、その内容を多少補う形で「新しい望郷の歌」が位置付けられているとみてよいかと思う。 「まなざしの地獄」では、一…

森田洋司/清水賢二「新訂版 いじめ」(1986=1994)

今回は前回の大久保のレビューで引用されていた、森田・清水の「いじめ」を取り上げる。読んだのは新訂版であったが、最初の部分のみが追加されているようであるため、本旨については、1986年の時点での議論であるとみなしてよいだろう。 まず最初に簡単に本…

牧野篤「認められたい欲望と過剰な自分語り」(2011)

<考察> 今回はフーコーを批判するジジェクを読む前にジジェクのラカン解釈を改めて確認する意味で、牧野文献を読みます。読書ノートの注(※)で一通り違いを指摘していますが、こちらでは、要点をまとめていきたいと思います。本書を取り上げたのは、ある…

宮沢章夫「東京大学「80年代地下文化論」講義」(2006)

本を読む方に随分時間を取られて、レビューが追いつきません…月に3冊ペースでと思ってましたが、今月このままだと一冊になってしまうので、今回は記憶に残っている本をレビューしておきます。 クラブミュージックをかじっていた私にとっては、この80年代…

アブラハム.H.マズロー、上田吉一訳「完全なる人間」(1962=1964)

今回から検討したいのは、「人間性(ヒューマニティ)」についてである。これまでも関連的な分野をレビューしてきたように思うが、だいぶ考えもまとまってきたので、考察の対象として加えていきたい。ちなみに訳書は1979年の新装版を読んでいます。(読書ノ…

村上靖彦「治癒の現象学」(2011)

今回と次回はちょうど今読み終わった本を取り上げたいと思います。 まず、前回の「ポップ心理学」の流れを汲んでいる本を取り上げます。ナドーはポップ心理学についてはとにかく批判的に見ていました。が、もう少しポップ心理学がどのように機能しているのか…