2018

サミュエル・ハンチントン「分断されるアメリカ」(2004=2004)

本書は「文明の衝突」で知られるサミュエル・ハンチントンの著書である。 世間的には近年のアメリカの動向を予見していた著書としても評価されているようであるが、私自身の関心から言えば、これまで「日本人論」に対してあまり語られないのではないかと指摘…

西尾幹二「西尾幹二全集 第一巻 ヨーロッパの個人主義」(2012)

今回も日本人論を取り上げる。 西尾については最初に「教育と自由 中教審報告から大学改革へ」(1992)を読み、レビューする予定だったが、背景として西尾の考える日本人論について押さえておく必要があると感じたため、本書を読んだ。 その考え方についてはこ…

E.H.キンモンス、広田照幸ら訳「立身出世の社会史」(1981=1995)

今回も「日本人論」として「社会問題」を扱った著書のレビューを行いたい。 本書は、明治から昭和初期にかけてのエリート層の青年(高等学校進学者)向けの雑誌の言説分析を中心にして、「立身出世」の意味合いの変化について捉える中で、現在の「日本人論」…

ジョン・W・ダワー「人種偏見」(1986=1987)

本書は第二次大戦前後の「日本人論」を分析したものである。 杉本・マオアのレビューの際にも「日本人論」には「日本人から見たもの」と「欧米人から見たもの」の2つがありえることを指摘したが、本書はその両方の議論について当時の言説からその異同につい…

E.F.ボーゲル「日本の新中間階級」(1963=1968)

本書は、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の著書でも知られるエズラ・ヴォーゲルの60年代の著書で、日本のM町におけるフィールドワークをもとにした研究書である。特に日本の新中間階級の家族の状況に密着した研究として、とても貴重であり、特に家族生活…

妻鹿淳子「犯科帳のなかの女たち」(1995)

本書は江戸時代の岡山藩における「犯科帳」を史料にしながら、当時の社会(共同体)がどのようにあったかについて分析を行っているものである。 特にポイントとなるのは、p72-73にあるような記述である。ここでは過去の議論において江戸時代における農村部の…

杉本良夫/ロス・マオア「日本人は「日本的」か」(1982)

今回はすでに予告していた杉本・マオアのレビューである。 本書は「日本人論」の批判の著書である。本書の大きな主張点の一つは、『日本人論は単一な国民性論とみられており、その複数性を考えようとしない』という点である(p69)。ベネディクトの「菊と刀」…

ポール・グッドマン、片岡徳雄監訳「不就学のすすめ」(1964=1979)

本書は「脱学校論」のはしりとも言われている著書であり、すでに議論している「アメリカの個人主義」について安直な議論を行う論に対する反論として、今回取り上げた。 河合隼雄は、日本の教育において「権威」というものが人を拘束するものとなっており、ア…

野村正實「知的熟練論批判」(2001)

今回は以前小池和男のレビュー後に小池批判を行う著書があるのを知り読んだ野村の著書である。野村はすでに一度小池の「知的熟練論」の理論面での批判を行っているが、私もレビューした遠藤(1999)の提示した人事評価における「仕事表」の捏造の可能性に触発…