か行

苅谷剛彦「教育と平等」(2009)

前々回の教育改革をテーマにしたレビューで黒崎と藤田の論争を取り上げたが、今回は藤田と同じ教育社会学の分野から、苅谷剛彦を取り上げる。本書は「大衆教育社会のゆくえ」(1995)に続き、戦後の日本の教育における「平等」観の形成について、主に知識社会…

黒崎勲「教育の政治経済学」(2000)

今回から新しいテーマで継続的にレビューを行いたい。私自身が丁度学生時代に研究対象としていた分野にも関連するが、90年代から00年代の教育改革をめぐる議論を読み解いていく。 その中で特に注目していきたいのは、教員組織の自律性、『改善』の意志を持っ…

村上泰亮・公文俊平・佐藤誠三郎「文明としてのイエ社会」(1979)

今回も日本人論として、大平政権にも影響を与えた著書としても知られる本書を取り上げる。 本書のポイントの一つである多系的発展論の歴史的説明がいかに正しいのかという点は私の能力を超えるため触れないが、欧米的な個人主義や近代化論について一定の批判…

勝野尚行編「教育実践と教育行政」(1972)

本書は、以前レビューした榊編(1980)と同様、名古屋大学の教育学部の関係者により書かれたものである。 前回、榊編でレビューした際に学校教育をめぐる議論においてなされる「専門性」について少し検討したが、本書はまさにその点を詳しく論じていたため、…

E.H.キンモンス、広田照幸ら訳「立身出世の社会史」(1981=1995)

今回も「日本人論」として「社会問題」を扱った著書のレビューを行いたい。 本書は、明治から昭和初期にかけてのエリート層の青年(高等学校進学者)向けの雑誌の言説分析を中心にして、「立身出世」の意味合いの変化について捉える中で、現在の「日本人論」…

ポール・グッドマン、片岡徳雄監訳「不就学のすすめ」(1964=1979)

本書は「脱学校論」のはしりとも言われている著書であり、すでに議論している「アメリカの個人主義」について安直な議論を行う論に対する反論として、今回取り上げた。 河合隼雄は、日本の教育において「権威」というものが人を拘束するものとなっており、ア…

小池和男「日本の熟練」(1981)

今回は、遠藤のレビューで取り上げた小池和男の著書である。小池が何故人事評価の制度をめぐって「誤解」をしたのか、それを日本人論に対する見方から説明することできるのではないのか、という点を課題としていた。今回は本書と「学歴社会の虚像」(1979、…

マイクル・クライトン、酒井昭伸訳「ライジング・サン」(1992=1992)

今回は今後の伏線の意味も含めつつ、「日本人論」の捉え方の事例として、マイクル・クライトンの小説を取り上げる。 本書では至るところで「日本人」についての言及があったが、基本的に何らかの因果関係が説明されている部分を全てノートにまとめた上で、ど…

小林正「日教組という名の十字架」(2001)

今回は本書の主題とは少しずれるが、戦後直後の資料に言及している内容に関連して、2点程気になったことについて触れてみる。1.「太平洋戦争史」や「新教育指針」の当時に影響力について 恐らくは日本が独立していく50年代には徐々に忘れられていったもの…

河合隼雄「河合隼雄著作集7 子どもと教育」(1995)

今回は、河合隼雄の「父性原理・母性原理」について考察するにあたり、その特徴をまとめてみたい。河合の著書は「母性社会日本の病理」(1976)をはじめ、教育にも関連する数冊を読んだが、これらの本からまとめると、6点にまとめることができるだろう。1…

河合隼雄・加藤雅信編「人間の心と法」(2003)

今回はいわゆる「日本人論」関連のレビューをしていきたい。 本書は川島武宣的な日本(東洋)/西洋の対比として用いられていた法意識の議論(p39)に対して、二種類の大規模な海外比較の調査の結果を用いつつ、その検証も含めた法意識の分析を行っている。本…

加藤美帆「不登校のポリティクス」(2012)

本書は、学校ぎらい・登校拒否・不登校といった学校に通わない子どもをめぐる議論の変遷を追う中で、そこに内在する政治性について述べた本、のようである。 私は以前松下圭一のレビューの中で、一般的な「ネオリベ批判」の言説に対して、否定的に捉えている…

片岡徳雄編「教育名著選集1 集団主義教育の批判」(1975=1998)

○本書の時代的な位置付けについて 本書は、全生研を中心にした集団主義教育の批判を「研究を通して」行ったものとしては「最初でしかも唯一のものとなった」ものとされる(pii)。この認識があながち間違えた認識といえないのかもしれない。特にいくつかの実…

久徳重盛「母原病」(1979)

今回は前回に続き、広田文献で予告した久徳重盛を取りあげます。 私の手に取った本は1981年10月で55刷のものですが、当時のベストセラーになった本でもあります。本書の主張がそのまま受け入れられたというには、非常に極端な内容も含んでおりますが、反響は…

柄谷行人「トランスクリティーク」(2004)

今回もまた資本主義批判の文献です。読書ノートは岩波現代文庫版(2010)のものです。(読書ノート) p27 「資本は、たえず、差異を見出し、差異を創出し続けなければならない。それが、産業資本における絶え間なき技術革新の原動力である。それはけっして人…

メラニー・クライン「メラニー・クライン著作集2、4」

今回は謎だと言っていたクラインです。クラインの著作集は1巻と2巻、4巻を読みましたが、2巻と4巻が彼女の精神分析の手法を理解する上で重要だと感じました。どちらかが欠けるとよくわからなくなるので、両方レビューの対象としました。(読書ノート2…

エリアス・カネッティ「群衆と権力」(1960=1971)

今回は、ジラールとドゥルーズを繋ぐ意味でエリアス・カネッティを取りあげます。もともと1971年に訳書がでましたが、2010年にも表紙が新しくなった新版が出ているようです。どちらともページ数表記は同じになっているようですが、私は上巻を1971年版、下巻…

ジル・ドゥルーズ、フェリックス・ガタリ、宇野邦一訳「アンチ・オイディプス」(1972)

ようやくですが、ドゥルーズとガタリの考察に入ります。次回もドゥルーズの「意味の論理学」をレビューする形で考察は2回に分けます。訳書は河出文庫のものです。(読書ノート、上巻) p38-39 「分裂症者はひとつのコードから他のコードへと移行し、すばやい…

黒石晋「欲望するシステム」(2009)

前回、アレントの議論で「欲求と欲望」に関することをコメントしてましたが、今回はこの差異について考察していた本をレビューします。 去年度読んだ本だったので、今回はほとんど当時の読書ノートのままで、一部用語の説明などを加えました。(読書ノート)…