2019

小木曽尚寿「先生、授業の手を抜かないで」(1980)

今回は「恵那の教育」についての検討を行いたい。本書は「坂本地区教育懇談会」の代表である著者が地元中津川の地方新聞「恵陽新聞」(現在は廃刊)に長期連載を行った文章を中心に収録されているようである。本書には1985年に出た続編もあるものの、どちら…

村上泰亮・公文俊平・佐藤誠三郎「文明としてのイエ社会」(1979)

今回も日本人論として、大平政権にも影響を与えた著書としても知られる本書を取り上げる。 本書のポイントの一つである多系的発展論の歴史的説明がいかに正しいのかという点は私の能力を超えるため触れないが、欧米的な個人主義や近代化論について一定の批判…

勝野尚行編「教育実践と教育行政」(1972)

本書は、以前レビューした榊編(1980)と同様、名古屋大学の教育学部の関係者により書かれたものである。 前回、榊編でレビューした際に学校教育をめぐる議論においてなされる「専門性」について少し検討したが、本書はまさにその点を詳しく論じていたため、…

中野雅至「公務員バッシングの研究」(2013)

本書は「公務員バッシング」という「現象」について、その発生背景について論じた本らしい。「らしい」としたのは、私自身が本書を偶然図書館で見つけ、タイトル及び分量から期待していた内容とは全く違うものだったからである。もちろん私が期待したのは、…

日比野登「財政戦争の検証」(1987)

本書は1960年~70年代の美濃部東京都政に対する評価をめぐる議論に関連して、革新自治体に対する批判に加担した政府・自治省を強く批判した本である。美濃部都政の評価に関する議論は今後もできる限り検証していきたいが、今回も論点整理の一環でレビューし…

榊達雄編「教育「正常化」政策と教育運動」(1980)

本書は70年代後半を中心にした、岐阜県における教育正常化運動に対する批判を行っている本である。今回本書を取り上げたのは、過去にレビューした無着成恭が在籍していた明星学園中学の教育論争と同じ基軸で、本書で支持される「恵那の教育」批判を行う動…

マイケル・ブレーカー、池井優訳「根まわし かきまわし あとまわし」(1976)

本書は日本の外交交渉(バーゲニング)の分析を通じて日本人論を展開する本である。ただし、p227やp228に見られるように、既存の日本人論に対して一定の批判的な視点があること、そして本書を通して語られる日本人論は、かなり複雑な印象がある。 少なくとも…

田中一彦「忘れられた人類学者」(2017)

本書は、1937年に日本の農村を中心にしたフィールドワークをもとに著した『須恵村』で知られるジョン・エンブリーと『女たち』の著書で知られるエラ・エンブリー夫妻がみた須恵村などについて記した本である。 本書の考察をする前に、まず本書を読む前の段階…

斎藤喜博「第二期斎藤喜博全集 第1巻」(1983)

今回は以前レビューしていた斎藤喜博を再度取り上げる。本書でメインになっているのは「授業論」であり、斎藤自身これまでそのような「授業論」が存在しなかったことを憂い、そのような「教授」に関する議論がもっと教師に読まれる必要性を感じて書いた内容…

板倉章「黄禍論と日本人」(2013)

今回は、西尾のレビューで取り上げた「黄禍論」についての本である。 本書は19世紀から20世紀にかけて、中国人・日本人の海外への進出について、特に「人の多さ」をもって支配されるのではないのか、という議論にはじまる「黄禍論」について、諷刺画を中心に…

牧久「昭和解体」(2017)

「国鉄の分割・民営化は、二五兆円を超える累積債務(これに鉄建公団の債務、年金負担の積立金不足などを加えると三七兆円)を処理し、人員を整理して経営改善を図ることがオモテ向きの目的であったが、そのウラでは、戦後GHQの民主化政策のもとで生まれた労働…