2015

竹田青嗣「現象学は〈思考の原理〉である」(2004)

今回はこれまでレビューしてきたフーコー、デリダの議論を相対化してみる意味で、竹田の著書(本書と「現象学入門」1989、「エロスの現象学」1996)を参照してみたい。竹田はフーコーらの議論をポストモダニズムの議論として一括りでまとめているが、私自身…

片岡徳雄編「教育名著選集1 集団主義教育の批判」(1975=1998)

○本書の時代的な位置付けについて 本書は、全生研を中心にした集団主義教育の批判を「研究を通して」行ったものとしては「最初でしかも唯一のものとなった」ものとされる(pii)。この認識があながち間違えた認識といえないのかもしれない。特にいくつかの実…

斎藤喜博「斎藤喜博全集 別巻2」(1971)

今回は50〜60年代において校長としての教育実践を行い、影響力のあった斎藤喜博を取り上げてみる。私自身読んだのは60年代後半から70年代初頭にかけて行われた対談集である本書と刊行10年足らずで5万部は売り上げていたという(「斎藤喜博全集 第4巻」1969,…

全生研常任委員会編「地域子ども学校と地域子ども組織」(1978)

本書は、全国生活指導研究協議会(全生研)が、1968年から取り組んでいった「ひまわり学校」の実践について書かれたものである。 これまで広田や遠山のレビューで、70年代以降学校サイドからの「教育の担い手」としての役割の撤退の傾向があるのではないのか…

小川太郎「教育と陶冶の理論」(1963)

今回は比較的古い文献を読んだ訳だが、これまで読んできた「社会問題」との関連性、その歴史的な議論における位置づけについてはなかなか捉えづらい内容のものであった。一方で「支配的な教育」という形で右寄りの議論の批判を行うものの、他方で日教組的な…

OECD教育調査団「日本の教育政策」(1976)

本書は1971年に発表されたOECDによる報告書の内容の一部を翻訳したものである。 報告書が出された当時から、この報告書はかなり頻繁に教育をめぐる議論で参照されてきている印象があり、恐らくは一定の影響力を持った内容とみなしてよいのではなかろうかと思…

遠山啓「数学と社会の教育」(1971)

今回は再度遠山啓の文献をレビューしつつ、前回の遠山の議論の補足を行っていきたい。本書もまたバラバラの論文集という形態をとっており、前回の「遠山啓エッセンス」と重複しているものもある。また、論文の初出はほとんどが1968年以後の内容となっており…

見田宗介「まなざしの地獄」(2008)

本書は、1973年発表の「まなざしの地獄」、1965年発表の「新しい望郷の歌」が収録されている。おそらく、メインは「まなざしの地獄」であり、その内容を多少補う形で「新しい望郷の歌」が位置付けられているとみてよいかと思う。 「まなざしの地獄」では、一…

十川幸司「来るべき精神分析のプログラム」(2008)

今年最後のレビューは久々に精神分析関連の著書である。十川の著書は以前「精神分析への抵抗」を読んだ際に、なかなか私に近い解釈もしているなという印象を持っていた所である。本書においても、基本的にはメラニー・クラインの解釈も類似している印象があ…

「理念型」の考察―羽入辰郎「学問とは何か」を中心に―その2

(その1の続きです。)○妥当性問題…理念型の「妥当性」を判断する者は誰か? すでに何度か理念型の「妥当性」については触れたが、その考察をしよう。この妥当性というレベルで「理念型」を議論せずに「あてはまるかどうか」のみで考えることはそもそも理念…

「理念型」の考察―羽入辰郎「学問とは何か」を中心に―その1

今回はずっと保留してきたヴェーバーの「理念型」についての考察を行っていきたい。それにあたり、羽入辰郎の文献と、その批判を行っている折原浩の議論を中心に検討しながら行いたいと思う(※1)。今回は考察が長くなったため、ノートは省略する。また、内…

芹沢俊介「現代〈子ども〉暴力論 増補版」(1989=1997)

今回は大久保のレビューでもとりあげられていた芹沢の著書である。本書は新版、増補版と2度構成の変更を行っているが、基本的な部分については1989年の出版の時点で確定した内容であったとみてよいだろう。内容に対する批判については読書ノートに多くコメ…

森田洋司/清水賢二「新訂版 いじめ」(1986=1994)

今回は前回の大久保のレビューで引用されていた、森田・清水の「いじめ」を取り上げる。読んだのは新訂版であったが、最初の部分のみが追加されているようであるため、本旨については、1986年の時点での議論であるとみなしてよいだろう。 まず最初に簡単に本…

大久保正廣「混迷の学校教育」(2010)

今回は、長らく現場教師も務めていた大久保の著書のレビューである。 本書は戦後日本で展開されてきた規律や指導の言説について分析を行う中で、特に「管理主義」言説を展開する、全国生活指導研究協議会(全生研)を中心にした教育運動に欠落する視点を指摘…

チャールズ・ライク「緑色革命」(1970=1971)

今回は、リースマンのレビューの際に少しだけ出てきた「緑色革命」を取り上げます。 当初は理念型の議論の理解のため、意識1、2、3の捉え方をみていきたいと思っていました。この論点についてはノートのコメント(※部分)でも少し言及してますが、また後日…

久徳重盛「母原病」(1979)

今回は前回に続き、広田文献で予告した久徳重盛を取りあげます。 私の手に取った本は1981年10月で55刷のものですが、当時のベストセラーになった本でもあります。本書の主張がそのまま受け入れられたというには、非常に極端な内容も含んでおりますが、反響は…